ロレックス オイスターパーペチュアル──定価91万円から、「最も安い」の実力
最も安いロレックスはオイスターパーペチュアル28の¥914,100(2026年1月改定後)。36mm・41mmの定価と中古実勢、ターコイズが中古340万円になったカラーダイヤル狂騒まで、コレクター歴30年の評論家が「素のロレックス」の実力を検証する。
川村 篤志 時計評論家 / コレクター歴30年
公開: 2026年7月24日 更新: 2026年7月24日
「いちばん安いロレックスって、正直どれなんですか」
会食の席で、30代の起業家に単刀直入に訊かれた。こういう質問は嫌いではない。答えはオイスターパーペチュアル。2026年1月の改定後の定価で、28mmなら¥914,100、メンズの標準的な36mmでも¥996,600だ。
ただし、と私は続けた。この時計を「安いから」で選ぶと半分損をする。オイスターパーペチュアルは、ロレックスの二大発明をそのまま名前にした「原点の時計」であり、中身はサブマリーナと同世代。しかも文字盤の色ひとつで中古340万円の狂騒が起きた、カタログで最も奇妙な立ち位置のモデルでもある。
この記事では、コレクター歴30年の私が、オイスターパーペチュアル全4サイズの2026年定価、カラーダイヤルの相場の現実、36mmと41mmの選び分け、そして「最も安いロレックス」という位置づけの本当の意味を、実体験を交えて整理する。

「オイスター」と「パーペチュアル」──ロレックスの原点がそのまま現行
まず名前の話をしたい。オイスターパーペチュアルという名は、ロレックスの歴史上の二大発明の連結でできている。
一つ目が1926年の「オイスターケース」。牡蠣のように密閉された世界初の防水ケースで、リューズとケースバックをねじ込み式にすることで水と埃を遮断した。二つ目が1931年の「パーペチュアル機構」。ローターが半永久的(perpetual)に回り続けてゼンマイを巻き上げる、今日の自動巻の原型だ。
つまりオイスターパーペチュアルとは、ロレックスがロレックスである理由だけを残して、他のすべてを削ぎ落としたモデルということになる。日付表示がなく、回転ベゼルもなく、ダイヤモンドもない。サブマリーナもデイトジャストもGMTマスターも、系譜を遡ればこの「素のロレックス」に行き着く。
エントリーモデルという言葉から想像される「廉価版」では断じてない。ケースは上位モデルと同じオイスタースチール、36mmと41mmが積むCal.3230はサブマリーナのノンデイトと同じムーブメント、防水は100m。40以上のブランドを触ってきた私の感覚では、「一番安い」と「一番手抜き」がここまで乖離しているブランドはロレックスくらいだ。
全4サイズの定価一覧(2026年1月改定後)
現行のオイスターパーペチュアルは4サイズ展開。2026年1月の価格改定(約7%値上げ)後の定価は以下のとおりだ。
| サイズ | 型番 | ムーブメント | 定価(2026年1月改定後) |
|---|---|---|---|
| 28mm | 276200 | Cal.2232 | ¥914,100 |
| 31mm | 277200 | Cal.2232 | ¥930,600 |
| 36mm | 126000 | Cal.3230 | ¥996,600 |
| 41mm | 134300 | Cal.3230 | ¥1,045,000 |
この改定で、ついに全サイズが90万円を超えた。「100万円以下で買える唯一のロレックス」という表現も、36mm以上ではもう成立しない。数年前の感覚のまま店頭に行くと驚くことになる。
注意すべきは41mmの型番だ。2025年4月のコレクション変更で、リファレンスが124300から134300に変わった。仕様の骨格は変わっていないが、中古市場では新旧の型番が混在しているので、検索するときは両方を見る必要がある。そして興味深いことに、廃番となった124300は標準文字盤でも中古実勢がやや強含みで推移している。ロレックスの中古市場は「作られなくなった」だけで値が動く世界だ。
文字盤は各サイズともシルバー、ブラック、グリーンなどの複数展開で、色による定価差はない。定価では、だが──次の章で書くとおり、実勢では色がすべてを変える。
カラーダイヤル狂騒曲──ターコイズは中古340万円
オイスターパーペチュアルの現代史は、2020年に大きく曲がった。この年ロレックスは、ターコイズブルー、コーラルレッド、イエロー、グリーンといった鮮烈なパステル/キャンディカラーの文字盤を一斉投入した。地味の代名詞だった「素のロレックス」に、突然キャンディがぶちまけられたのだ。
火が付いたのは2021年以降。とりわけターコイズブルーは、某宝飾ブランドの限定ノーチラスを連想させる色味から「ティファニーブルー」の通称で呼ばれ、世界中で争奪戦になった。そして2022年、ロレックスは41mmのターコイズを含む複数のカラーを突然廃番にする。供給が絶たれた人気色がどうなるかは、この市場では決まっている。
2026年7月時点の実勢を挙げよう。
- 41mm ターコイズ(124300・廃番): 中古約340万円──当時定価の3倍超
- 36mm コーラルレッド(126000・廃番): 中古約191万円
- 36mm ターコイズ(126000・現行): 定価¥996,600ながら、正規店で見かけることはまずない
一方で2023年には、パステル各色の風船をちりばめた「セレブレーション」ダイヤルが登場し、話題をさらった。ロレックス自身が、この狂騒を静かに楽しんでいるようにすら見える。
参考までに、2026年時点の現行カタログに載る主な文字盤展開を整理しておく。
| サイズ | 現行の主な文字盤カラー |
|---|---|
| 28mm(276200) | シルバー、ピスタチオ、ベージュ、ブラック |
| 31mm(277200) | シルバー、グリーン、ターコイズブルー、ブラック、マルチカラー |
| 36mm(126000) | シルバー、グリーン、ターコイズブルー、ブラック、マルチカラー |
| 41mm(134300) | シルバー、グリーン、ブラック、マルチカラー |
見てのとおり、ターコイズは31mmと36mmには公式に残っており、41mmには無い。この「41mmだけ無い」という事実が、廃番124300ターコイズの中古340万円を支えている構図だ。色は同じでもサイズが違えば別物として値が動く。ロレックスの中古市場の面白さと業の深さが、このモデルには凝縮されている。
この狂騒の渦中で、私は象徴的な場面に立ち会ったことがある。2022年の廃番発表の直後、都内の中古店で41mmのターコイズに値札が付け替えられる瞬間を見た。数時間前の価格から、その場で数十万円上がった。店員は淡々と作業していたが、隣で眺めていた常連客がぽつりと「時計の値段じゃなくなったね」と言った。あの一言が、この数年のオイスターパーペチュアルを最も正確に要約していると思う。
30年この世界にいる人間として言っておきたい。**文字盤の色に定価の2〜3倍を払うのは、時計ではなく「希少性」を買う行為だ。**それを承知の上での購入なら止めないが、私の助言はいつも同じで、「定価で買える色を選び、色は次の一本の楽しみに取っておけ」。時計は塗料ではなく、機械と過ごす時間に金を払うものだと思っている。
36mmと41mm、どちらを選ぶか
メンズの現実的な選択肢は36mmと41mmだ。価格差は約¥48,000しかないので、予算ではなく手首と生活で決めることになる。
36mm(126000)を選ぶべき人
- ジャケットやシャツで過ごす日が多い
- 手首周りが17cm以下
- クラシックな時計のプロポーションが好き
- 女性と兼用する可能性がある
41mm(134300)を選ぶべき人
- Tシャツ・カジュアル中心
- 手首周りが17.5cm以上
- 現代的なサイズ感に慣れていて、36mmでは物足りない
言い切るなら、迷ったら36mmだ。オイスターパーペチュアルはベゼルにも文字盤にも装飾がないぶん、41mmでは文字盤の「面の広さ」が想像以上に素直に出る。シンプルな時計ほど小さいサイズが締まる、というのは40ブランド触ってきた私の経験則で、特にこのモデルには強く当てはまる。
サイズの歴史も少しだけ補足したい。現行の41mmは2020年に初めて加わったサイズで、それ以前の最大径は39mm(Ref.114300、2015〜2020年)だった。この39mmが実に良い塩梅のサイズで、廃番後も中古市場で静かに指名買いが続いている。「36では小さいが41は大きい」という声は昔から一定数あり、39mmはその受け皿だった。現行ラインでは、同じ「中間サイズ問題」への答えがエクスプローラーの40mmに引き継がれた形だが、オイスターパーペチュアルで39mmが恋しい人は中古の114300を探す価値がある。また、かつて存在した34mm(124200)も2024年頃にカタログから消えており、オイスターパーペチュアルは「サイズすら廃番になる」モデルだということは、中古選びの前提として覚えておきたい。
なお、同じ価格帯まで視野を広げると、日付とジュビリーブレスの華やかさを持つデイトジャスト(36mmで定価¥1,241,900)が比較対象になる。装いに「艶」が欲しい人はデイトジャスト、道具としての潔さならオイスターパーペチュアル。ここは好みが綺麗に分かれるところだ。国産に目を向ければ、グランドセイコーの白樺(SLGH005・¥1,276,000)も同予算帯の強力な対抗馬になる。詳しくはグランドセイコーのおすすめに書いた。
定価99万円、実勢150万円──この乖離をどう考えるか
さて、ここまで定価を軸に書いてきたが、多くの読者にとっての現実は別のところにある。オイスターパーペチュアルの標準文字盤ですら、並行新品・中古の実勢は150万円前後という事実だ。
2026年時点で、36mm(126000)のシルバーやブラックの並行・中古価格は約150〜155万円。41mm(124300)のシルバーで約155〜158万円、グリーンなら約170万円という水準にある。定価996,600円の時計に対して、5割増しの値が付いている計算になる。
理由は単純で、正規店に球がないからだ。カラーダイヤルブームの余波で、標準色まで含めてオイスターパーペチュアル自体の割り当てが細く、「一番安いロレックスを定価で」と思って正規店を回ると、その入手難に驚くことになる。とはいえデイトナやGMTマスターのペプシに比べれば現実的な部類で、根気のある人が数ヶ月〜のマラソンの末に標準色を定価で買えた例は、私の周囲にも複数ある。
選択肢は三つだ。第一に、正規店で定価購入を狙う。時間はかかるが最も健全で、約100万円という価格の意味が生きる。第二に、並行・中古で150万円前後を払い、時間を買う。第三に、実勢150万円を出すなら、と発想を変えて中古市場全体を見渡す。150万円あれば一世代前のスポーツモデルの中古も視野に入ってくるからだ。この判断にはロレックスを中古で買うための完全ガイドが役に立つはずだ。
どれが正解かは、その人の時間と価値観による。ただ一つ言えるのは、「最も安いロレックス」という言葉は定価の世界の話であって、実勢の世界では「最も乖離率が大きくなりがちなロレックス」でもある、ということだ。数字を知らずに店頭に立つと、この乖離に飲まれる。
「最も安い」は「最も退屈」ではない──30年目の再評価
正直に告白すると、若い頃の私はオイスターパーペチュアルを「いつか買う人のための仮の時計」だと思っていた。40代のあるとき、その認識は変わった。
手元のコレクションが20本になった頃、旅行に持っていく一本を選ぶ場面で、私は毎回オイスターパーペチュアル系の時計を手に取っていることに気づいた。日付合わせが要らない。ベゼルに気を使わない。どんな服にも合う。盗難を過度に恐れるほどの派手さがない。薄くて軽い。──つまり、時計に求められる仕事を全部こなして、何も主張しない。
Cal.3230は日差−2〜+2秒の高精度クロノメーターで、パワーリザーブ約70時間。金曜の夜に外して月曜の朝にまだ動いている。この「週末をまたぐ」余裕は、複数本を使い回す人間には実にありがたい。28mmと31mmが積むCal.2232も同じ思想で作られた実直な機械だ。
維持費の面でも書き添えておくと、ロレックスの正規オーバーホールは5〜7年に一度で約¥80,000〜110,000。日付機構も回転ベゼルもクロノグラフもないオイスターパーペチュアルは、構造上の弱点が最も少なく、新品なら国際保証も5年付く。「壊れる要素からの距離」で言えば、ロレックスのカタログで最も遠い位置にいる時計だ。長期保有のトータルコストという視点でも、この時計は静かに優秀である。
サイズ展開が28mmから41mmまで揃うことも、家族で楽しめるという意味で書き残しておきたい。私は妻の記念の年に31mmのグリーンを贈ったが、ムーブメントの思想も外装の質も私の36mmと完全に同格で、「レディース版」という妥協が一切ない。夫婦で同じモデルの別サイズを使うと、オーバーホールの周期管理まで揃って何かと都合が良い、という生活者的な発見もあった。
数年前、社会人になった甥に時計の相談を受けたときも、最終的に勧めたのはオイスターパーペチュアルの中古だった。予算の都合で一世代前の個体になったが、彼はいまも毎日それを着けている。先日会ったとき「時計に詳しい取引先の部長に、いい選び方をしていると褒められた」と嬉しそうに話していた。分かる人が見れば、素のロレックスを選ぶ判断力そのものが評価される。装飾で武装した時計にはない種類の信頼が、この時計にはある。
時計を知れば知るほど、装飾ではなく基本性能に目が行くようになる。オイスターパーペチュアルは、その境地に達した人が「上がり」で選ぶ時計としても成立するし、最初の一本として選べば、以後のすべての時計を測る物差しになる。入門の位置づけについてはメンズ腕時計の選び方 完全ガイドで、ロレックス全体の中での立ち位置はロレックス完全ガイドで整理しているので、併せて読んでほしい。
最後に──引き算の贅沢
オイスターパーペチュアルは、足し算の時計ではない。防水ケースと自動巻──ロレックスの原点だけを残して、あとは全部引いた。その引き算の結果が、2026年の定価で91万円から104万円。決して安くはないが、中身を知れば、カタログで最も誠実な値付けだと私は思う。
冒頭の起業家は、その後36mmのブラックを正規店で買えたと連絡をくれた。「地味すぎたかと思ったけれど、毎日これしか着けていません」とあった。分かる。私も30年かけて、結局そこに戻ってきた。
派手な色に3倍払う自由も、素の一本を定価で待つ自由も、この時計は両方受け止めてくれる。ただ、どちらを選んでも覚えておいてほしい。あなたが買っているのは「一番安いロレックス」ではなく、「一番ロレックスらしいロレックス」だということを。値札の順位は毎年変わるが、この立ち位置だけは、100年経っても変わらないはずだ。
参考資料
- ロレックス公式 オイスター パーペチュアル — メーカー公式のモデル詳細・スペック情報
- 一般社団法人 日本時計協会 — 日本の時計産業統計と機械式時計の基礎知識
- PIAZO オイスターパーペチュアル全型番・定価一覧(2026年新作対応) — 全サイズの改定後定価・現行文字盤の確認に使用
- ESTIME 2026年1月ロレックス価格改定一覧 — 126000の改定前後定価の確認に使用
次に読む
- ロレックス完全ガイド:全モデルの序列と選び方の全体地図
- ロレックス デイトジャスト:同予算帯で「艶」を取るならこちら
- ロレックスを中古で買う:実勢150万円の使い方を広げる選択肢
- メンズ腕時計の選び方 完全ガイド:予算別・年代別の基本方針
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よくある質問
- Q. 一番安いロレックスはいくらですか?
- 2026年1月の価格改定後、最も安いロレックスはオイスターパーペチュアル28(Ref.276200)の税込¥914,100です。メンズの実用サイズでは36mm(Ref.126000)が¥996,600、41mm(Ref.134300)が¥1,045,000。この改定で全サイズが90万円を超えました。ただし正規店で買えた場合の話で、並行・中古の実勢は標準文字盤でも150万円前後が2026年時点の相場です。
- Q. ターコイズブルー(ティファニーブルー)のオイスターパーペチュアルはまだ買えますか?
- 41mmのターコイズ(124300)は廃番となり、2026年7月時点の中古相場は約340万円と定価の3倍を超えています。36mm(126000)のターコイズは現行カタログに残っており定価¥996,600ですが、正規店での入手は極めて困難です。廃番の36mmコーラルレッドも中古約191万円。色に定価の2〜3倍を払うか、定価で買える色を選ぶか──私は後者を勧めています。
- Q. オイスターパーペチュアルの36mmと41mm、どちらを選ぶべきですか?
- ジャケットを着る日が多いなら36mm、Tシャツ主体で腕が太めなら41mmです。価格差は約¥48,000(¥996,600と¥1,045,000)。デイトジャストと違いベゼルも文字盤も装飾がないぶん、41mmは面の広さが素直に出るので、手首17cm以下の方には36mmを勧めます。なお41mmは2025年にリファレンスが124300から134300へ変わったため、中古で探す際は両方の型番を見てください。
- Q. 初めての高級時計・初めてのロレックスとしてオイスターパーペチュアルはありですか?
- あり、というのが30年時計を見てきた私の答えです。ムーブメント(Cal.3230)はサブマリーナと同世代、ケースも同じオイスタースチールで、防水100m・パワーリザーブ約70時間と実用性能に一切の手抜きがありません。日付表示がないため日付合わせすら不要で、機械式入門の障壁が最も低い。「安いから」ではなく「余計なものがないから」選ぶ一本です。
About the author
川村 篤志
時計評論家 / コレクター歴30年・機械式時計 所有歴30年・40ブランド以上
機械式時計コレクター。所有歴のあるブランドは40以上、現役で稼働している手持ちは20本前後。雑誌寄稿100本超。「投機ではなく所有」を語る数少ない評論家。
Editor's note
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