ロレックス マラソン完全ガイド──2026年の購入制限と正規店で買うための現実論
ロレックスマラソンとは正規店を回って定価購入を目指す行為。成功者の訪問回数は平均20回という調査もある。コレクター歴30年、自身も正規店で完走した評論家が、2026年の購入制限ルール・在庫の回り方・現実的な完走戦略を体験から語る。
川村 篤志 時計評論家 / コレクター歴30年
公開: 2026年7月24日 更新: 2026年7月24日
先に言い切ってしまう。ロレックスマラソンは、2026年のいまも「完走」できる。
ただし、走り方は数年前とはまるで変わった。「毎日通えばいつか買える」という牧歌的な時代は終わり、購入制限は過去最も厳しく、来店予約制や抽選制を導入する正規店も増えた。何も知らずに走り出せば、時間だけを失う。
私はコレクター歴30年になるが、白状すると、長らく正規店とは縁が薄かった。所有してきたサブマリーナ5本はすべて並行店経由。それが数年前、半ば意地になって正規店通いを始め、1年弱・40回近い訪問の末に、エクスプローラー36を定価で購入した。あの瞬間の妙な達成感は、並行店で札束を積んで買う体験とは別物だった。
この記事では、その体験と30年の市場観察を重ねて、ロレックスマラソンの実態──購入制限のルール、在庫の回り方、現実的な完走戦略──を整理する。精神論ではなく、構造の話をしたい。

ロレックスマラソンとは何か──なぜ「走る」必要があるのか
ロレックスマラソンとは、正規店を繰り返し訪問して、目当てのモデルを定価で購入しようとする活動を指す俗語だ。マラソンと呼ばれるのは、ゴール(購入)までに何十回もの訪問という長い道のりを要するからである。
なぜそんなことが必要なのか。答えは単純で、人気モデルの実勢価格が定価を大きく上回っているからだ。2026年1月改定後の定価と並行相場を比べると、デイトナ126500LNは定価¥2,499,200に対し実勢約500〜680万円、GMTマスターIIは定価¥1,780,900(ジュビリー)に対し実勢340万円超。つまり正規店で買えれば、並行店の半額以下で同じ時計が手に入る。
この価格差が転売需要を生み、転売需要が店頭在庫を枯渇させ、正規店はショーケースが空のまま──という構造が、2020年頃から常態化した。各モデルの定価と乖離の全体像はロレックス完全ガイドに整理したが、乖離が大きいモデルほどマラソンの距離は長くなる、と理解してほしい。
補足しておくと、ロレックス正規店の店頭に「在庫を隠している」わけではない。入荷そのものが需要に対して圧倒的に少なく、入った個体は多くの場合、その日のうちに誰かの手首に消える。マラソンとは、その「入荷の瞬間に店頭に居合わせる確率」を上げる行為にほかならない。
走っている層も、想像以上に幅広い。転売目的の常連が問題視されがちだが、私が店頭で言葉を交わしてきた範囲では、昇進や結婚の記念に一本を探す会社員、退職金で長年の憧れに手を伸ばす60代、父から譲られたロレックスの「自分の一本」を探す30代──そういう普通の時計好きが大半だ。この記事は、その人たちに向けて書いている。
2026年の購入制限ルール──まずこれを頭に入れる
マラソンを始める前に、絶対に知っておくべきなのが購入制限だ。2024年12月16日の変更で、ルールは一段と厳格になった。2026年現在の運用を整理する。
| 区分 | 対象 | 制限内容 |
|---|---|---|
| 全モデル共通 | すべてのロレックス | 1人1本まで/購入後6ヶ月間は他モデルも購入不可/同一リファレンスは1年間購入不可 |
| 指定品番(最難関) | デイトナ 126500LN | 購入後、他の指定モデル1年間不可/同一Ref.5年間不可 |
| 〃 | サブマリーナ 124060/126610LN/126610LV | 同上 |
| 〃 | GMTマスターII 126710BLNR/126720VTNR | 同上 |
| 支払い | 全購入 | 本人名義クレジットカードが原則(現金一括は原則不可)/顔写真付き身分証(運転免許証・マイナンバーカード等)の提示 |
ポイントは3つある。
第一に、指定6品番は「5年ルール」の世界だ。 一度デイトナを買えば、同じデイトナは5年間、サブマリーナやGMTなど他の指定モデルも1年間買えない。転売ヤーの回転を止めるための設計で、実際、これで店頭の空気は少し変わったと感じる。
第二に、身元確認が徹底された。 本人名義のクレジットカード決済と顔写真付き身分証はセットで、購入履歴は正規店間で共有されていると考えた方がいい。他人名義での代理購入は、まず通らない。
第三に、これは公式発表されたルールではない。 ロレックス本社が明文化したものではなく、国内正規店の運用として広まっているものだ。つまり予告なく変わる。この記事も2026年時点のスナップショットとして読んでほしい。
なお、エクスプローラーI/II、シードゥエラー、ディープシー、オイスターパーペチュアルなどは指定品番の対象外だ。共通の6ヶ月ルールさえ明ければ次が買える。後述する「買いやすいモデルから入る」戦略の根拠がここにある。
在庫はどう回っているのか──40回通って見えたこと
マラソンの最大の謎は「いつ、何が入荷するのか」だ。断っておくが、正確な入荷スケジュールは店員も客に教えられない。その上で、私が1年弱の定点観測で得た感触と、経験者の間で共有されている傾向を書く。
入荷は不定期だが、偏りはある。 週の頭、特に月曜に入荷が多いという説は経験者の間で根強く、私の体感とも矛盾しない。ただし「月曜に行けば買える」わけではなく、あくまで確率の濃淡の話だ。
店頭に並ぶ前に消える個体がある。 頻繁に通い、購入意思を明確に伝えている客に対して、入荷時に「ちょうど入ったものがあります」と奥から出てくることがある。私のエクスプローラー36がまさにそれだった。ショーケースが空でも、会話の中で欲しいモデルを一貫して伝え続ける意味はここにある。
2026年は「予約・抽選」への移行が進んでいる。 以前はフリー入店が基本だったが、都心の店舗を中心に、来店予約制や入店抽選を導入する店が目立ってきた。並ばず走らず、スマートフォンでエントリーする「マラソン」に変わりつつある。この流れは、足で稼ぐ古典的マラソンの価値を下げる一方、地方店や百貨店内の店舗など、まだフリー入店できる店の相対的な狙い目度を上げている。
成功までの距離感。 購入成功者の平均訪問回数を約20回とする調査がある一方、成功例は1〜10回に集中するという分析もある。ばらつきが大きいのは、狙うモデルと通い方で難度がまるで違うからだ。デイトナなら年単位、デイトジャストなら月単位──それくらいの距離感で計画するのが現実的だと私は思う。
どの店を走るかも結果を左右する。 一般論として、都心の旗艦店や有名路面店は客数が多く、一見の客が入荷に出会える確率は薄まる。一方、百貨店内の店舗や地方都市の正規店は客の絶対数が少なく、通う客の顔が販売員に残りやすい。私が完走したのも、行列のできる有名店ではなく、生活圏にある百貨店内の店だった。自宅や職場から無理なく通い続けられる店を「ホーム」に決めて深く通う方が、有名店を広く浅く回るより、私の見る限り成功率は高い。
現実的な完走戦略──「買いやすいモデル」から入る
ここからが本稿の核心だ。私がマラソンについて相談されたとき、必ず伝える戦略がある。最初から最難関を狙わない。制限対象外の「買いやすいモデル」で購入実績を作ることだ。
なぜ実績が効くのか
正規店の販売員の立場で考えてみればいい。目の前に2人の客がいる。1人は初来店でいきなり「デイトナを」と言う。もう1人は半年前にデイトジャストを購入し、その後も時計の話をしに来店している。希少な入荷を案内したいのはどちらか、という話だ。購入履歴は店に残る。1本目の購入は、2本目への最短ルートでもある。
買いやすいモデルの現実的な選択肢
私の観察で、店頭で出会える頻度が明らかに高いのは次のあたりだ。
- オイスターパーペチュアル36/41(¥996,600/¥1,045,000)──現行エントリー。中身はサブマリーナ系と同じCal.3230系で、1本目として何ら妥協ではない
- エアキング(¥1,208,900)──個性的な文字盤で好みは分かれるが、その分出会いやすい
- デイトジャスト36/41(¥1,208,900〜)──ロレックスの本流。文字盤バリエーションが豊富で、こだわらなければ遭遇率は高い。詳しくはデイトジャストの記事に書いた
- エクスプローラー36/40(¥1,177,000/¥1,241,900)──指定品番の対象外ながら人気は高い。私が完走したのもこれだ
逆に、デイトナ・サブマリーナ・GMTマスターIIのステンレスは、初心者がいきなり完走できる可能性は限りなく低い。サブマリーナを本気で狙うなら、上記のいずれかで実績を作ってからでも遅くない。どうしても待てないなら、並行・中古という選択肢を否定する理由もない。中古ロレックスの買い方も併せて読んでほしい。
マラソンの心得──店員は「敵」ではない
戦略の最後に、所作の話をしたい。マラソンという言葉には攻略ゲームの響きがあるが、実際にやることは、一人の販売員と信頼関係を作るという、ひどく地味な営みだ。
私が守ってきたのは次の3つだけだ。第一に、入店したら在庫確認だけで帰らない。時計を見せてもらい、会話をする。第二に、欲しいモデルと理由を短く、毎回同じように伝える。「サブマリーナかGMTかデイトナ、何でもいいから」という客は、何も欲しくない客と同じに見える。第三に、無い日は潔く帰る。粘っても在庫は湧かない。
相場の話、転売の話、他店の話はしない方がいい。販売員は毎日、転売目的の客を見抜く訓練を積んでいる。疑われる要素を消すことは、テクニック以前の礼儀だと思っている。
実践編──私の通い方のルーティンと、避けるべき行動
戦略論だけでは走れないので、実践の細部も書いておく。エクスプローラーを手にするまでの1年間、私が実際に続けていたルーティンだ。
週1〜2回・10分・同じ販売員
訪問は平日の昼、週1〜2回。狙いは店が空いていて、販売員とゆっくり話せる時間帯だからだ。土日の混雑時は、販売員にとって客は「さばく対象」になる。顔と名前を覚えてもらう局面では、空いている時間に勝るものはない。
滞在は長くて10分。挨拶をして、ショーケースの時計を1本見せてもらい、欲しいモデルを一言添えて、引き上げる。この「一貫性」がすべてだと私は思っている。毎回違うモデルの在庫を聞く客は、店から見れば相場を追う転売候補にしか見えない。1年間、私は「エクスプローラーの36を探しています」以外の在庫確認をしなかった。
もう一つ、細かい話だが効いたと感じているのは、手首に本物の時計を着けていくことだ。ロレックスである必要はない。私はオメガやグランドセイコーを着けて通った。時計の話が自然に始まり、「この人は時計が好きで買う客だ」と伝わる。これは演出ではなく、実際そうであることが前提だが。
避けるべき行動──販売員は見ている
逆に、確実に印象を損なう行動も列挙しておく。
- 「聞き逃げ」──入店して在庫確認だけして帰る。最も多く、最も嫌われる
- 開店前の行列への毎日参加──店によっては熱意ではなく圧力と受け取られる
- 家族・知人名義での購入打診──本人名義決済と身分証確認が徹底された今、ほぼ不可能な上、信頼を一度で失う
- 複数店掛け持ちの公言──事実であっても、口にする意味がない
- SNSでの店舗名・販売員名の公開──店側もSNSは見ている。入荷情報の投稿が回り回って店の負担になる
要するに、自分が販売員だったら嫌なことをしない、というだけの話だ。マラソンのコツの大半は、テクニックではなく品性に属する。
予約制・抽選制の店では「継続」が記録になる
来店予約制の店では、足で稼ぐ古典的マラソンは通用しない。だが悲観する必要はない。予約枠では販売員と1対1で確実に話せる。フリー入店の喧騒の中で顔を覚えてもらう努力に比べれば、むしろ効率的だとすら言える。抽選制の店も、エントリーの継続自体が来店意思の記録として残る。形が変わっただけで、「一貫した意思表示を続けた者に回ってくる」という本質は変わっていない、というのが私の見立てだ。
マラソンを走るべきでない人
30年時計を見てきた立場から、あえて止める側の話もしておく。
時間コストを計算してほしい。 週1回・往復2時間の訪問を1年続ければ100時間。あなたの時給換算でいくらになるか。並行店との価格差がそれを下回るなら、マラソンは合理的ではない。特にサブマリーナの定価と実勢の差は約50〜70万円まで縮まっており、デイトナほどの「走る動機」はない。
「買えたモデルを好きになる」覚悟がないなら向かない。 マラソンの本質は、欲しいモデルを待つ間に、別のモデルと出会ってしまうことにある。それを許容できる人にとってマラソンは豊かな回り道だが、「この1本以外いらない」という人には、並行店で即決する方が幸福だ。ロレックス以外に視野を広げれば、同予算で買える傑作はいくらでもある。ロレックスが買えない今、選ぶべき5本はそういう視点で書いた。
投機目的なら、やめておけ。 購入制限と本人確認の強化で、転売の期待値は明確に下がった。そもそも時計を右から左に流して得る数十万円のために、店と販売員の信頼を消費するのは、割に合わない人生の使い方だと私は思う。
最後に──走り切った朝のこと
エクスプローラー36を受け取った日のことは、よく覚えている。40回近く空振りした店で、いつもの販売員が「川村さん、今日はお見せしたいものがあります」と奥に消えた。トレイの上の一本を見た瞬間、正直、デイトナでもサブマリーナでもないことに一片の落胆もなかった。1年間の会話の積み重ねの先に、この店がこの一本を自分に回してくれた──その事実が、時計の価値に上乗せされていた。
そして完走はゴールであると同時に、次のスタートでもある。購入から6ヶ月(指定品番なら1年)の制限が明けたあとも、私はいまも同じ店に、時計の話をしに寄っている。1本目を買った店との関係は、2本目への最短距離だ。マラソンで手に入るのは時計だけではなく、「あの店に自分の担当がいる」という、時計趣味の続きの風景なのだと思う。
マラソンとは結局、定価で時計を買う行為ではなく、時計と出会うまでの時間を引き受ける行為なのだと思う。その時間を楽しめるなら、走る価値はある。楽しめないなら、別の買い方がある。どちらを選んでも、時計はあなたを待っている。
ロレックスの全体像とモデル選びはロレックス完全ガイドに、腕時計選び全般の地図はメンズ腕時計の選び方 完全ガイドにまとめてある。走り出す前に、目的地だけは決めておいてほしい。
参考資料
- ロレックス公式サイト — 正規販売店の検索と各モデルの公式情報
- Revalue News ロレックス購入制限ルール解説 — 2024年12月変更後の制限内容・対象品番の詳細
- Asia Watch Trade ロレマラ成功のコツと購入実態調査 — 購入成功者の平均訪問回数など実態データ
- 一般社団法人 日本時計協会 — 日本の時計業界統計と基礎知識
次に読む
- ロレックス サブマリーナ:最難関の指定品番、その実像と現実
- ロレックスが買えない今、選ぶべき5本:マラソンしない、という選択肢
- 中古ロレックスの買い方:並行・中古ルートの攻め方
- ロレックス完全ガイド:全コレクションの体系と選び方
「大人の趣味」では、本物志向の道具と長く付き合う知恵を、専門家5名が綴っています。編集方針はこちら。
よくある質問
- Q. ロレックスマラソンは何回くらい通えば買えますか?
- 保証はありませんが、目安となるデータはあります。購入成功者の平均訪問回数を約20回とする調査がある一方、実際の成功例は1〜10回に集中しているという分析もあります。私自身はエクスプローラー36を手にするまで1年弱・40回近く通いました。回数そのものより、平日昼など空いた時間帯に、欲しいモデルを一貫して伝え続けられるかが結果を分けます。
- Q. 2026年のロレックス購入制限はどんなルールですか?
- 2024年12月16日の変更以降、全モデル共通で「1人1本まで・購入後6ヶ月間は他モデルも購入不可・同一リファレンスは1年間購入不可」が基本です。さらにデイトナ126500LN、サブマリーナ124060/126610LN/126610LV、GMTマスターII 126710BLNR/126720VTNRの指定6品番は、購入後ほかの指定モデルが1年間、同一リファレンスは5年間買えません。支払いも本人名義のクレジットカードが原則で、顔写真付き身分証の提示が必要です。
- Q. マラソンで買いやすいモデルはどれですか?
- 購入制限の指定6品番(デイトナ・サブマリーナ・GMTマスターIIのステンレス)は最難関で、初心者がいきなり狙うのは現実的ではありません。一方、オイスターパーペチュアル(¥996,600〜)、エアキング(¥1,208,900)、デイトジャスト、エクスプローラー36/40あたりは店頭に出る頻度が明らかに高く、私の観察では数ヶ月の継続訪問で出会える可能性が十分あります。まず制限対象外のモデルで購入実績を作るのが定石です。
- Q. マラソン中に在庫を聞くとき、店員に嫌がられませんか?
- 聞き方次第です。入店してすぐ「デイトナありますか」だけ聞いて帰る客は、店側も歓迎しません。私が続けてきたのは、挨拶をして、時計を見せてもらい、欲しいモデルとその理由を短く伝え、無ければ潔く引き上げる、という数分間の所作です。販売員も人間で、彼らには裁量があります。転売目的と疑われる振る舞い(複数店舗の掛け持ちを匂わせる、相場の話ばかりする)を避けるだけでも、扱いは変わってきます。
About the author
川村 篤志
時計評論家 / コレクター歴30年・機械式時計 所有歴30年・40ブランド以上
機械式時計コレクター。所有歴のあるブランドは40以上、現役で稼働している手持ちは20本前後。雑誌寄稿100本超。「投機ではなく所有」を語る数少ない評論家。
Editor's note
編集後記とエッセイは、note で。
サイト本編に書ききれなかった編集現場の話、取材で出会った職人たちのエピソード、執筆陣の30年・20年の所有歴。 サイトとは別の温度の話を、note でゆっくり綴っています。