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ロレックス サブマリーナ──30年所有して分かった、本当の魅力と現実

ロレックス サブマリーナを買おうとしている人向けに、コレクター歴30年の評論家が、現行モデル4種の整理、中古相場の現実、メンテナンス費用、他のスポーツモデルとの比較、「初めての一本」としての適性まで、実体験から正直に語る。

川村 篤志 時計評論家 / コレクター歴30年

公開: 2026年5月28日 更新: 2026年5月28日

ロレックス サブマリーナ──30年所有して分かった、本当の魅力と現実

サブマリーナを、私は人に勧めなくなった。

正確には、「最初の一本に」勧めなくなった。30年前、自分が最初の高級時計に選ばなかったことを、今でも正解だと思っている。

1998年、私が最初に買ったサブマリーナは14060。ノンデイトのモデル。¥350,000前後で、当時の自分には大金だったが、それでも市場価格としては「信じられないくらい安い時代」だった。今は同じものが中古で¥1,500,000を超える。

それから現在まで、サブマリーナだけで合計5本を所有してきた。今手元にあるのは2本。1998年購入の14060と、2011年購入の116610LN。最新の126610は持っていない。

このページでは、30年サブマリーナと付き合ってきた私が、購入を検討している方に向けて、雑誌には書かれない「現実」を綴る。

ステンレスブレスレットのブラック文字盤ダイバーズウォッチがダークウッドの机に置かれた写真

70年、ほぼ姿を変えなかった時計

ロレックス サブマリーナ は、1953年に発表された世界初の量産防水時計(300m防水)。

ダイバーズウォッチの原型を作った時計であり、70年以上の歴史を経た現在も、ロレックスの主力モデルとして君臨し続けている。

基本仕様(現行 126610LN)

  • ケース径: 41mm(旧型は40mm)
  • 防水性能: 300m
  • ムーブメント: Cal.3235(パワーリザーブ70時間)
  • 素材: オイスタースチール
  • ベゼル: セラクロム(傷つきにくいセラミック)
  • ブレスレット: オイスター(コマ調整・グライドロック延長機構)

この仕様は、1953年の初代モデルから本質的には変わっていない。デザイン、機能、サイズ──全てが洗練されてきたが、サブマリーナの本質は70年間ほとんど同じだ。

最新の仕様はロレックス公式のサブマリーナページで確認できる。スペックや素材は更新されているが、シルエットの基本は60年以上変わっていない、というのは興味深い事実だ。

現行モデル4種類

2025年現在、サブマリーナには4つの現行モデルがある:

型番通称文字盤ベゼル日付定価
124060ノンデイトなし¥1,141,800
126610LN黒サブあり¥1,254,000
126610LVスターバックスあり¥1,343,100
126613LBブルーサブあり¥1,917,300(金無垢コンビ)

「グリーンサブ」と呼ばれていた一世代前の116610LV(緑文字盤・緑ベゼル)は2020年に廃番。現行の126610LV(黒文字盤・緑ベゼル)は、その後継として “スターバックス” と呼ばれている。

30年所有して分かった、サブマリーナの本当の魅力

雑誌は「防水性」「視認性」「正確性」を魅力として挙げる。しかし、30年使った私から見ると、本当の魅力は別にある。

魅力1: 「迷わない」道具としての完成度

毎朝、時計を選ぶときに迷わない。これがサブマリーナの最大の魅力だ。

スーツでも、ジャケットでも、ポロシャツでも、Tシャツでも、サブマリーナは合う。「TPO不問」の万能性は、おそらく時計の歴史で唯一無二だ。

私は他に10本以上の時計を所有しているが、結局のところ、毎日着けるのは大抵サブマリーナだ。

魅力2: 30年使っても古びない

1998年に買った14060は、2025年の今でもデザインが古びていない。私が30年使い続けた他の時計(複数のクロノグラフ、ドレスウォッチ等)は、どれもどこかで「時代を感じる」瞬間が来る。

サブマリーナにはそれが無い。「ベーシック」という究極のラグジュアリーを体現している。

魅力3: メンテナンスを受け入れる文化が確立している

ロレックスの正規オーバーホールは5-7年に一度、約¥80,000-110,000。

これを「高い」と思うかどうかが、機械式時計との付き合いを決める。私は30年で4回オーバーホールに出している。総額¥40万弱。30年で割れば年¥13,000の維持費だ。

これを高いと思う方は、サブマリーナを買ってはいけない。

「派手すぎる人気」をどう考えるか

ここから先は、私がサブマリーナを語るとき必ず触れる「不都合な真実」だ。

現在、サブマリーナは人気がありすぎる

投機目的の購入が急増した

2020-2022年頃から、サブマリーナの中古相場が異常に上昇した。126610LNの定価¥1,254,000に対し、並行価格は¥2,000,000を超えた時期もあった。

理由は、コロナ禍での余剰資金が時計市場に流れ込んだから。「ロレックスは値上がりする」という神話が、SNSで増幅された

現在は相場が落ち着いてきており、126610LNの並行価格は¥1,500,000前後。それでも定価より2割高い。

「正解の時計」になり過ぎている

サブマリーナは、もはや「経営者・芸能人・スポーツ選手の標準時計」と化している。街で着けている人を見るのは珍しくない。

これを「ステータス」と取るか、「みんなが着けすぎていて魅力がない」と取るかは、人による。

私は半々の感覚だ。「サブマリーナだけは別格」と思える瞬間と、「他の時計の方が個性がある」と思う瞬間がある

私が他人にサブマリーナを勧めない理由

正直に言うと、私は最近、初めての高級時計を買う友人にサブマリーナを勧めていない。

理由は、**「サブマリーナを最初に買うと、他の時計に興味が湧きにくくなる」**から。

サブマリーナは「正解」すぎる。最初に正解を経験すると、その後の時計選びが「サブマリーナと比べてどうか」という基準になってしまう。

機械式時計の世界は広い。最初にオメガやIWCを経験した方が、後でサブマリーナを買った時の感動が大きい。これが私の意見だ。

機械式時計の入門全般についてはこちらの記事に詳しく書いた。

ダイバーズウォッチの文字盤クローズアップ、ステンレスベゼルと時針の質感

中古サブマリーナの選び方──年代別の特徴

中古市場では、サブマリーナの歴代モデルが流通している。私が30年見てきた経験から、年代別の特徴を整理する。

14060(1989-2010年・5桁時代の最終形)

  • 防水: 300m
  • ケース: 40mm
  • ベゼル: アルミ
  • 価格目安: 中古¥800,000-1,500,000

5桁モデルの最終形で、サブマリーナの「クラシックな顔」を持つ最後の世代。私の手元にあるのもこれ。アルミベゼルが経年で日焼けする独特の風合いがある。

116610LN(2010-2020年・40mm 6桁世代)

  • 防水: 300m
  • ケース: 40mm
  • ベゼル: セラクロム
  • 価格目安: 中古¥1,400,000-1,800,000

現代の入門サブマリーナとして最も人気。セラクロムベゼルの登場で、ベゼルの傷を気にしなくて済むようになった。サイズも40mmで、現代の日本人の手首にちょうどいい。

126610LN(2020年-現行・41mm新世代)

  • 防水: 300m
  • ケース: 41mm
  • ベゼル: セラクロム
  • ムーブメント: Cal.3235(パワーリザーブ70時間)
  • 価格目安: 中古/並行¥1,500,000-1,900,000

現行最新世代。ケース径が1mm増え、ラグが少し細くなり、視覚的にはより現代的。ムーブメントも刷新され、パワーリザーブが70時間に延長された。

16610(1988-2010年・5桁の主流)

  • 防水: 300m
  • ケース: 40mm
  • ベゼル: アルミ
  • 価格目安: 中古¥700,000-1,200,000

**「サブマリーナ デイトの基本形」**として、世界で最も流通量の多い世代。コレクター価値は控えめだが、実用性は十分。30代-40代が「最初の中古サブマリーナ」として買うのに最適。

14060M(1999-2012年・ノンデイト後期)

  • 防水: 300m
  • ケース: 40mm
  • 文字盤表記: SWISS / SWISS MADE 表記の違いあり
  • 価格目安: 中古¥1,000,000-1,500,000

ノンデイトの後期型。「ノンデイト派」のコレクターに人気。

メンテナンスと相場の現実

サブマリーナを所有するということは、永続的な維持費を引き受けるということだ。

オーバーホール費用

サービス先費用目安期間
ロレックス正規(東京サービスセンター)¥80,000-110,0006-10週間
信頼できる街の時計師¥40,000-70,0002-4週間
並行店経由のメンテナンス¥50,000-80,0004-6週間

5-7年に一度、必ず必要。これをやらないと、ムーブメント内部の潤滑が枯れて、内部摩耗が進む。

私は基本的にロレックス正規に出している。費用は高めだが、純正部品が確実に使われ、防水テストもしてくれる。「安心料」だと思っている。

相場の現実(2025年5月時点)

モデル並行新品中古並品中古極上
124060¥1,500,000¥1,200,000¥1,400,000
126610LN¥1,600,000¥1,400,000¥1,550,000
126610LV¥1,750,000¥1,500,000¥1,650,000
116610LN-¥1,500,000¥1,750,000
14060M-¥1,000,000¥1,400,000

これは2025年5月時点の私が観察している相場感。市場は流動的なので、購入時は複数の並行店・中古店で見比べてほしい。

サブマリーナと他のスポーツモデル比較

ロレックスのスポーツモデルには複数の選択肢がある。サブマリーナと他のモデルを比較してみる。

サブマリーナ vs エクスプローラー1(124270)

  • サブマリーナ: ダイバーズ。視認性最高。重め(150g)
  • エクスプローラー1: 万能型。シンプル。軽め(130g)

サブマリーナを買うか、エクスプローラー1を買うか」は、30代経営者に最も多い悩み。私の助言は「TPO最重視ならサブ、毎日着け軽さ重視ならエクスプローラー1」。

サブマリーナ vs GMTマスターII

  • サブマリーナ: シンプル機能。視認性最高
  • GMTマスターII: 2タイムゾーン機能。海外出張で実用的

海外出張が多い経営者には、GMTマスターIIの方が実用的だ。ただし**「機能を使うか」より「機能の存在感」**を求めるなら、サブマリーナの方が上品。

サブマリーナ vs シードゥエラー

  • サブマリーナ: 300m防水。41mm
  • シードゥエラー: 1220m防水。43mm

シードゥエラーはサイズが大きく、日本人の手首にはやや過剰。深海の専門家以外には、サブマリーナで十分。

「初めての一本」にサブマリーナはアリか

私がよく受ける質問が、これだ。

「機械式時計の初めての一本にサブマリーナはアリですか?」

私の答えは、「アリだが、慎重に」

サブマリーナを最初に買うメリット

  1. 失敗しない:30年使っても飽きない設計
  2. 資産価値が落ちにくい:中古市場が確立されている
  3. TPO万能:あらゆる場面に着けていける

サブマリーナを最初に買うデメリット

  1. 他の時計に興味が湧きにくくなる:「正解」を最初に経験する弊害
  2. 個性が無い:同じ時計を着けている人が多すぎる
  3. 入手困難:正規定価で買えるチャンスは滅多にない

私のおすすめする経路

機械式時計のキャリアとして、私は以下の順序を推奨している:

  1. オメガ シーマスター プラネットオーシャン(¥600,000台)で機械式時計の入口を学ぶ
  2. IWC ポルトギーゼ(¥1,200,000台)で「ドレスウォッチの本格派」を経験する
  3. ロレックス サブマリーナ(¥1,500,000台)を3本目に買う

この順序だと、サブマリーナを手にした時の感動が最大化される。最初にサブマリーナを買うのは、「ハネムーンを最初の海外旅行にする」ようなものだと、私は思っている。

ただし、経営者の立場や、コレクションに割ける時間が限られている方は、最初の一本としてサブマリーナを買うのも合理的な選択だ。後悔した人を、私は30年で一人も見ていない。

経営者の時計選びについては、別記事のプライベートバンカー20年の視点も参考になる。

ウォッチボックスに収納された複数の高級腕時計のコレクション

結論──サブマリーナを買うべき人、買わなくていい人

30年所有してきた私から、最後の助言。

サブマリーナを買うべき人

  • 「迷わない時計」が欲しい人
  • 30年使う前提で考えられる人
  • メンテナンス費用を「維持費」として受け入れられる人
  • TPO万能性を最重視する人

サブマリーナを買わなくていい人

  • 「人と違う時計」を持ちたい人
  • 機械式時計の世界を広く探検したい人
  • 短期間で買い替えを楽しむ人
  • 投機・転売目的の人

サブマリーナは、「迷ったらこれ」と言える時計の頂点だ。だからこそ、迷ってもいない人が買うと、他の時計の魅力が見えなくなる危険性がある。

それでも、私は明日もサブマリーナを着けて出かけるだろう。30年経っても、毎朝この時計を手首に巻く瞬間に、不思議な満足感がある。

それが、サブマリーナという時計の正体だと、私は思っている。

参考資料


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よくある質問

Q. サブマリーナのノンデイトとデイト、どちらを選べばいいですか?
装飾性を求めるならデイト(126610LN等)、純粋な機能美ならノンデイト(124060)です。私は両方持っていますが、毎日使うのはノンデイト。サイクロップレンズ(日付の拡大鏡)が無い分、文字盤が美しく見えます。価格差は約¥10万なので、好みで選んでください。
Q. 現行モデルと一つ前の世代(116610)、どちらが買い得ですか?
純粋な性能では現行126610が上(41mm化・新ムーブメント3235・パワーリザーブ70時間)。ただし価格差は中古市場で¥20-40万。「機能差より所有感」を重視するなら116610の中古、最新を持つ価値を重視するなら126610。私個人は116610の40mmサイズが好みで、これを2本所有しています。
Q. 並行輸入と正規購入、どちらが良いですか?
価格優先なら並行、安心感優先なら正規です。並行は定価より高いことが多いですが、即入手可能。正規は定価で買えるが、近年は購入機会が著しく限られています。私は正規の縁が無く、所有しているサブマリーナは全て並行店経由です。
Q. サブマリーナのメンテナンス費用はどのくらいですか?
ロレックス正規オーバーホールは5-7年に一度、約¥80,000-110,000。これを「維持費」として受け入れられるかが、機械式時計を所有する分かれ目です。30年使えば総額¥40-50万。それでも私は安いと感じています。
Q. 「初めての高級時計」にサブマリーナはアリですか?
アリですが、慎重に。サブマリーナは「正解」すぎるため、所有後に他のブランドに興味が湧きにくくなる傾向があります。「ロレックスに始まり、ロレックスで終わる」と言われる所以です。私は最初の一本にオメガを勧めることが多いですが、迷わずサブマリーナを買って後悔した経営者を一人も見たことはありません。
Q. サブマリーナを着けて泳いだり潜ったりしても本当に大丈夫ですか?
スペック上は300m防水で問題ありませんが、現実的には「日常の水回り」までに留めるのが正解です。30年使ってきた経験では、本気の海水浴やマリンスポーツに着けていく人は少数派。多くのオーナーは「いつでも潜れるという安心感」を所有しているのであって、実際に潜ることはほぼありません。

About the author

川村 篤志

時計評論家 / コレクター歴30年・機械式時計 所有歴30年・40ブランド以上

機械式時計コレクター。所有歴のあるブランドは40以上、現役で稼働している手持ちは20本前後。雑誌寄稿100本超。「投機ではなく所有」を語る数少ない評論家。

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