ロロピアーナ カシミヤ──素材の最高峰、20年所有エディターが語る本物
ロロピアーナ カシミヤを本物志向で選びたい人へ。20年で5着のカシミヤコートを所有してきたファッションエディターが、ロロピアーナの歴史、ベビーカシミヤ素材、価格帯、コート/セーター/マフラー別の選び方、修理体制を実体験で解説。
田島 啓介 ファッションエディター
公開: 2026年6月11日 更新: 2026年6月11日
「これがロロピアーナか」
20年前、初めてロロピアーナのカシミヤストールを手にした時、私はその言葉以外、何も発することができなかった。
それまで「カシミヤ」と呼ばれる素材を、いくつも触ってきた。バーバリー、アクアスキュータム、ザネラ、ブリオーニ。どれも本物のカシミヤだった。
しかし、ロロピアーナは別格だった。手に触れた瞬間、これまでのカシミヤが全て「カシミヤ風」に思えたほど。
このページでは、20年で5着のロロピアーナ製品を所有してきた私が、このブランドの「本当の姿」をファッションエディター視点で綴る。

ロロピアーナとは──「素材の最高峰」を作る男
ロロピアーナ は、1924年にイタリア北部ピエモンテ州クァローナで創業した織物メーカー。
現在のCEO、ピエル・ルイジ・ロロピアーナの代で、世界中の超高級素材を独占的に扱う「素材の最高峰」として君臨している。
創業100年の歴史
1924年、5代目のフランコ・ロロピアーナがファミリー事業として創業。当初は地元ピエモンテで織物業を営んでいた。
転機は1980年代。6代目のセルジオとピエル・ルイジが、世界各地で超希少素材の調達と織物技術の革新を始めた。
- モンゴル産ベビーカシミヤ: 生後12ヶ月以内の山羊の下毛
- 南米産ビキューニャ: ペルー・アンデス山脈のアルパカ近縁種
- ロータスフラワー: ミャンマー湖の蓮の茎から取れる繊維
- ザ・ギフト・オブ・キングス: オーストラリア産超細メリノウール
これらの素材を「全工程を自社で管理」することで、世界の他ブランドが模倣できない品質を実現している。
LVMH傘下へ
2013年、フランスの世界的ラグジュアリーコングロマリットLVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)の傘下に。
LVMH傘下になった後も、ロロピアーナは「素材の最高峰」という立ち位置を維持。アルマーニ・エルメス・シャネルなど、LVMH外のブランドにも生地供給を続けている。
ロロピアーナのカシミヤ──「ベビーカシミヤ」の世界
ロロピアーナのカシミヤが特別な理由は、「ベビーカシミヤ」にある。
ベビーカシミヤとは
通常のカシミヤは、生後3-7年の山羊から採取される下毛を使用する。一方、ベビーカシミヤは:
- 採取時期: 生後12ヶ月以内の山羊
- 繊維直径: 13.5ミクロン以下(通常は15-18ミクロン)
- 採取量: 1頭から年間50g(通常の半分)
- 生産量: 世界年間生産1万トンのカシミヤのうち、ベビーカシミヤは100トン未満(1%以下)
「繊維が細い」ことの意味は:
- より柔らかい(指で触れた時の感触)
- より光沢がある(光の反射特性)
- より暖かい(繊維間の空気保有量)
- より高価(採取量が少ない)
ロロピアーナの調達体制
ロロピアーナは、モンゴル産ベビーカシミヤの世界供給の40%以上を独占している。
これは、モンゴルの牧畜民家族と100年以上の信頼関係を築き、世代を超えた契約を維持してきた結果。他ブランドが追随できない構造だ。
ロロピアーナのメンズ商品ラインアップ
私が20年で所有・観察してきた主要商品:
カシミヤコート(最高峰)
メンズの代表商品。チェスターフィールド型・ピーコート型・ダッフル型がある。
| モデル | 素材 | 価格(新品) | 中古良品 |
|---|---|---|---|
| カシミヤ100% チェスターフィールド | カシミヤ100% | ¥480,000-650,000 | ¥250,000-380,000 |
| ベビーカシミヤ 上位モデル | ベビーカシミヤ | ¥850,000-1,200,000 | ¥500,000-720,000 |
| シングルコート | カシミヤ100% | ¥420,000-580,000 | ¥220,000-340,000 |
カシミヤコート全般の選び方はカシミヤコート メンズ ブランド で詳しく書いた。
カシミヤセーター・カーディガン
通年使えるカシミヤニット。
| モデル | 素材 | 価格 |
|---|---|---|
| クルーネックセーター | カシミヤ100% | ¥85,000-150,000 |
| Vネックセーター | カシミヤ100% | ¥80,000-145,000 |
| カーディガン | カシミヤ100% | ¥120,000-220,000 |
| ベビーカシミヤ上位モデル | ベビーカシミヤ | ¥180,000-380,000 |
「ロロピアーナの入門」として、最もアクセスしやすい価格帯。
マフラー・ストール
私が20年前に最初に買ったのもこれ。
- カシミヤストール: ¥75,000-150,000
- ベビーカシミヤ プレミアム: ¥180,000-280,000
「1枚で10年使える」のがロロピアーナのマフラー。色褪せず、毛玉ができにくい。
ジャケット・ブレザー
イタリアの伝統的な仕立て。
- カシミヤブレザー: ¥520,000-780,000
- モヘア混ブレザー: ¥420,000-650,000
ロロピアーナのジャケットは、国内オーダースーツの参考にもされるベンチマーク的存在。
オーダースーツの選び方はオーダースーツ 銀座 を参照。
スカーフ・ポケットチーフ
小物類。
- シルクスカーフ: ¥45,000-85,000
- カシミヤポケットチーフ: ¥25,000-45,000
ロロピアーナ vs 他の高級カシミヤブランド
ロロピアーナと、他の高級カシミヤブランドを比較する。
スペック比較
| 項目 | ロロピアーナ | ゼニア | ボリオリ | ブリオーニ |
|---|---|---|---|---|
| 創業 | 1924年(イタリア) | 1910年(イタリア) | 1900年(イタリア) | 1945年(イタリア) |
| カシミヤ仕入れ | 自社調達(モンゴル) | 自社調達 | 外部仕入れ | 外部仕入れ |
| コート価格 | ¥480,000-1,200,000 | ¥380,000-850,000 | ¥220,000-450,000 | ¥850,000-1,500,000 |
| 縫製 | 自社 | 自社 | 外部委託 | 自社(手縫い) |
| 強み | 素材の最高峰 | 万能・実用性 | コスパ | 手縫いの極致 |
選び方の指針
- 素材を最重視: ロロピアーナ
- バランス重視: ゼニア
- 価格重視: ボリオリ
- 手縫いを重視: ブリオーニ
私個人の20年の結論は「素材を妥協しないなら、ロロピアーナ一択」。他ブランドはどれも素晴らしいが、素材の純度ではロロピアーナを超えるものはない。
ロロピアーナの中古市場
新品が高額なため、中古市場の活用も有効。
中古ロロピアーナの相場
| カテゴリ | 新品定価 | 中古良品 |
|---|---|---|
| カシミヤコート(通常) | ¥480,000-650,000 | ¥250,000-380,000 |
| ベビーカシミヤコート | ¥850,000-1,200,000 | ¥500,000-720,000 |
| カシミヤセーター | ¥85,000-150,000 | ¥45,000-85,000 |
| マフラー | ¥75,000-150,000 | ¥40,000-80,000 |
| ジャケット | ¥520,000-780,000 | ¥260,000-450,000 |
中古良品で「新品の半額」が相場。ただし、ロロピアーナの中古は流通が極めて限定的で、年に数十着のレベル。
中古購入時のチェックポイント
- タグ・正規証明書: 必須
- 生地状態: 毛玉・薄毛部の確認
- 裏地・ライニング: シミ・剥がれ
- ボタン・トリミング: 純正状態か
- サイズ表記: イタリアサイズ(46/48/50/52)
革靴の中古購入と同じく、信頼できる店での購入が前提。詳細はジョンロブ 中古 価格と選び方 の判断基準を応用できる。
ロロピアーナのメンテナンス
20年使う前提のメンテナンス:
日常のケア
- 使用後: ブラシで埃を払う(馬毛ブラシ推奨)
- シーズン終了: ドライクリーニング(必ず専門店)
- 保管: 紙袋に入れて、防虫剤と共に
- 掛け方: 厚手の木製ハンガー(針金NG)
専門店でのケア
ロロピアーナ製品は、正規のお手入れサービスがある。
- メンテナンスクリーニング: ¥15,000-30,000
- 修繕(ほつれ・ボタン交換): ¥5,000-20,000
- リサイズ(袖丈・着丈調整): ¥25,000-60,000
「20年使う前提のメンテナンス費」を年間で計算すると、コートで年¥5,000-10,000程度。新品コート¥500,000を20年使うと、1年あたり¥30,000の高級コート、というのが実態だ。
ロロピアーナを買う場所
正規購入のルート:
直営店(最も確実)
東京・大阪・名古屋に直営ブティック。商品の品揃え・サービス共に最高。
- 東京: 銀座・表参道・六本木
- 大阪: 心斎橋・梅田
- 名古屋: 栄
高級百貨店
主要都市の高級百貨店でも展開:
- 伊勢丹新宿・銀座三越・高島屋日本橋等
オンライン
公式オンラインストアでも購入可能。ただし、試着なしの購入はリスクがあるため、可能なら店頭購入推奨。
アウトレット
長野・御殿場のアウトレットに店舗あり。前シーズンモデルを30-40%オフで購入できる。ただし、人気モデルは取り扱いが少ない。
結論──ロロピアーナ カシミヤ選びの5つの指針
20年で5着所有してきた私からの最終助言:
- 最初の一着はマフラーから:¥75,000で素材の最高峰を体験
- 次にセーター・カーディガン:通年使える定番アイテム
- コートは「最後の一着」:¥500,000+を躊躇しなくなったら買い時
- 20年使う前提でメンテナンス費を予算化:年¥5,000-10,000
- ベビーカシミヤは「経験値」を上げてから:通常カシミヤとの違いを理解してから
ロロピアーナのカシミヤは、「素材の最高峰」と一度は経験すべき本物だ。一度この品質を知ると、他のカシミヤが「カシミヤ風」に見えるようになる。
それは贅沢ではない。本物を知ることで、選択肢の中心が定まるという効果がある。
参考資料
- ロロピアーナ 公式 — 全商品ラインアップ・素材情報
- LVMH 公式 — ロロピアーナのLVMH内位置付け
- Loro Piana(Wikipedia) — ブランドの歴史
次に読む
- カシミヤコート メンズ ブランド:カシミヤコートの全体像
- オーダースーツ 銀座:合わせるスーツの選び方
- ジョンロブ 中古 価格と選び方:合わせる革靴
「大人の趣味」では、本物志向の道具と長く付き合う知恵を、専門家5名が綴っています。編集方針はこちら。
よくある質問
- Q. ロロピアーナとは何のブランドですか?
- 1924年創業の北イタリア・ピエモンテ州の高級織物メーカーです。世界中の超高級素材(ベビーカシミヤ・ビキューニャ・ロータスフラワー等)を独占的に扱い、自社で織物・縫製まで一貫生産する世界唯一のブランド。2013年にLVMH傘下になり、現在もアパレル業界の素材最高峰として君臨しています。
- Q. ロロピアーナのカシミヤは、他のブランドのカシミヤと何が違いますか?
- 3つの違いがあります。①素材:モンゴル・中国産の最高峰ベビーカシミヤ(生後12ヶ月以内の山羊の下毛)を使用。②織り:自社工場での独自織機で、毛の密度・光沢を最大化。③仕上げ:イタリア職人の手仕上げで、ドレープ感が一般カシミヤと別物。価格は一般カシミヤの2-3倍ですが、品質差は5倍以上感じます。
- Q. ロロピアーナのコート価格を教えてください。
- メンズチェスターフィールドコート(カシミヤ100%)で¥480,000-650,000。ベビーカシミヤ使用モデルで¥850,000-1,200,000。中古市場では、新品の半額程度(¥250,000-400,000)で入手可能。ただし、ロロピアーナの中古は流通が限定的で、年に数十着しか出回りません。
- Q. ロロピアーナとアルマーニ、エルメスのカシミヤとの違いは?
- アルマーニ・エルメスは、ロロピアーナから生地を仕入れて自社で縫製・販売しています。つまり、ロロピアーナは「素材の供給元」、アルマーニ・エルメスは「縫製・ブランドの提供元」。同じカシミヤ生地でも、最終価格はアルマーニ・エルメスの方が高くなる傾向があります。素材本来の純度を求めるなら、ロロピアーナ直販が最も合理的です。
About the author
田島 啓介
ファッションエディター・メンズファッション取材 20年
銀座・青山のオーダースーツ店、有名靴職人への取材歴20年。革製品の経年変化研究家。「直すことを前提に買う」が口癖。
Editor's note
編集後記とエッセイは、note で。
サイト本編に書ききれなかった編集現場の話、取材で出会った職人たちのエピソード、執筆陣の30年・20年の所有歴。 サイトとは別の温度の話を、note でゆっくり綴っています。