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パテックフィリップ ノーチラス──時計評論30年が綴る5711/5712と価格推移

パテックフィリップ ノーチラスの選び方を知りたい人へ。時計評論30年・コレクター歴30年の専門家が、5711/5712/5980等の現行モデル、定価¥430万-1億への高騰の経緯、ロレックスとの違い、ジェラルド・ジェンタのデザインの真価まで実体験で解説。

川村 篤志 時計評論家 / コレクター歴30年

公開: 2026年6月27日 更新: 2026年6月27日

パテックフィリップ ノーチラス──時計評論30年が綴る5711/5712と価格推移

「ノーチラスを正規で買えました」

時計評論30年で、私はこの言葉を5回しか聞いていない。

それほど、パテックフィリップ ノーチラスの正規購入は困難な状態が続いている。

私自身、過去30年でパテックフィリップを3本所有してきたが、ノーチラスは一度も自分で手に入れることができなかった。並行店で買おうとも考えたが、市場価格¥2,000-5,000万円の壁が、コレクターとしての判断を止めた。

ノーチラスは、そういう存在だ。「最も入手困難な実用ラグジュアリー時計」として、世界の時計愛好家の頂点に位置する。

このページでは、30年見てきたノーチラスの「本当の姿」を、コレクター視点で綴る。投機を煽る記事ではなく、現場目線で正直に評価する。

パテックフィリップ ノーチラス風の高級スポーツウォッチ、ブルー文字盤

ノーチラスの誕生──ジェラルド・ジェンタの伝説

パテックフィリップ ノーチラス は、1976年に発表された「ラグジュアリー・スチール・スポーツウォッチ」。デザインは、20世紀最高の時計デザイナージェラルド・ジェンタ によるもの。

**「船窓(ポートホール)にインスパイアされた8角形ベゼル」**が最大の特徴で、当時としては前代未聞の「スチール製で金時計より高価」という価格設定で時計界に衝撃を与えた。

ノーチラスの3つの革命

  1. スチール×高級: 1976年当時、高級時計は金やプラチナが当然。スチール製で当時の金時計より高い価格設定
  2. 薄型ケース: 約8mm の極薄ケース(自動巻きとしては当時最薄級)
  3. エレガントなスポーツウォッチ: 「スポーツ」と「ドレス」の境界を消した革新

これらが、その後の高級スポーツウォッチ(オーデマピゲ ロイヤルオークなど)の原型となった。

ノーチラス 主要モデル

私が30年見てきた中で、ノーチラスの代表モデルを整理する。

1. 5711/1A-010(ブルー文字盤・伝説的)

ノーチラスの代名詞」。2006-2021年生産。

  • ケース径: 40mm
  • 素材: オイスタースチール
  • 文字盤: ブルー(横縞模様)
  • 定価: ¥3,500,000-4,200,000(生産終了時)
  • 市場価格: ¥30,000,000-50,000,000

生産終了が2021年に発表され、市場価格が一気に2倍以上に。「ノーチラスといえばこれ」というモデル。

2. 5711/1A-014(グリーン文字盤・短命の名作)

伝説の中の伝説」。2021年限定発表、即生産終了。

  • 市場価格: ¥40,000,000-70,000,000

世界で最も入手困難な現行時計」と言われる。市場で買えるのは、コレクターからの放出時のみ。

3. 5712/1A-001(複雑機能・現行)

ムーンフェイズ・パワーリザーブ・日付付きの複雑機能モデル。

  • ケース径: 40mm
  • 定価: ¥4,300,000
  • 市場価格: ¥18,000,000-25,000,000

現行ラインで「スチール製ノーチラスを正規購入できる可能性のある」最も現実的なモデル。

4. 5811/1G(ホワイトゴールド・新世代)

2022年発表の5711の後継。

  • ケース径: 41mm(5711より1mm大)
  • 素材: ホワイトゴールド
  • 定価: ¥9,900,000
  • 市場価格: ¥25,000,000-40,000,000

5711の精神的後継」として位置づけられる新モデル。

5. 5980/1AR(クロノグラフ・スチールロゼゴールド)

クロノグラフ機能付きのスポーツノーチラス。

  • ケース径: 40.5mm
  • 素材: スチール+18Kローズゴールド
  • 定価: ¥7,500,000
  • 市場価格: ¥18,000,000-28,000,000

5モデル比較:

モデル定価市場価格入手難易度
5711/1A-010¥4,200,000(廃版)¥30,000,000-50,000,000中古市場のみ
5711/1A-014 グリーン¥4,500,000(廃版)¥40,000,000-70,000,000極めて稀少
5712/1A-001¥4,300,000¥18,000,000-25,000,000正規購入は5-10年待ち
5811/1G¥9,900,000¥25,000,000-40,000,000正規購入は5-10年待ち
5980/1AR¥7,500,000¥18,000,000-28,000,000正規購入は5-10年待ち

ノーチラス 価格推移──50年で1000倍

ノーチラスの価格推移を整理する。

定価市場価格目安
1976(初代発表)$3,100 ≒ ¥1,000,000¥1,200,000
1980-1990¥1,500,000¥1,800,000-2,200,000
1991-2000¥2,200,000¥2,500,000-3,000,000
2001-2010¥3,200,000¥3,800,000-5,500,000
2011-2015¥3,500,000¥5,500,000-9,500,000
2016-2020¥3,800,000¥9,500,000-18,000,000
2021-2023¥4,200,000(廃版)¥25,000,000-40,000,000
2024-2026-¥30,000,000-50,000,000

50年で市場価格は約30-40倍。これは時計史上、ほぼ前例のない上昇率。

価格爆発の3つの理由

  1. ジェラルド・ジェンタのデザインが50年経っても古びない
  2. パテックフィリップの極限的な生産制限(年数千本)
  3. 2010年代以降の高級スポーツウォッチへの世界的需要

特に 2021年の5711生産終了発表で、ノーチラスの市場価格は短期間で2倍に跳ね上がった。

ノーチラス vs ロレックス デイトナ

ノーチラスとデイトナ、どちらが格上か」は、時計コレクターの永遠の議論。

スペック比較

項目ノーチラス 5712ロレックス デイトナ 126500LN
年間生産数数千本数万本(推定)
定価¥4,300,000¥1,694,000
市場価格¥18,000,000-25,000,000¥6,500,000-9,500,000
入手難易度極めて困難困難
中古売却の流動性中(コレクター市場)高(広い市場)
ブランド価値最高峰(時計界の頂点)最高峰(実用ラグジュアリー)

用途別の選び方

  • 時計の頂点を所有したい: ノーチラス
  • 資産性と実用性のバランス: デイトナ
  • 30年使う前提の道具: デイトナ(修理体制が整う)
  • コレクションの中核: ノーチラス

私個人の30年の結論を、率直に書く。

ノーチラスは「所有の喜び」、デイトナは「実用の喜び」。両者は競合せず、補完関係にある。世界の時計コレクターの多くは、両方を所有している。

ノーチラスを買いたい人への現実的助言

ノーチラスが欲しい」という方への助言:

助言1: パテックフィリップ正規ブティックとの関係構築

最も現実的なルート。

  1. パテックフィリップを買う前に、他のパテックフィリップ(カラトラバ等)を3-5本正規購入
  2. 同じブティック・同じセールスマンと5-10年付き合う
  3. 信頼できる顧客」と認識される
  4. ノーチラス入荷時に声をかけてもらえる可能性が生まれる

実際、私が知る客の95%以上はこのルートで購入している。

助言2: 諦めて並行店で買う

市場価格¥2,000-5,000万を覚悟すれば、確実に手に入る。ただし:

  • 真贋鑑定書発行が必須
  • 長年営業の老舗(10年以上)から購入
  • 保証期間最低3ヶ月

助言3: 5711/1A-010(ブルー)の中古を狙う

生産終了モデルだが、市場流通量は最も多い。**「最初のノーチラスは5711」**という時計コレクターの定説がある。

結論──ノーチラスとの付き合い方

30年見てきた私からの最終助言:

  1. 「飲む価値」と「所有価値」を完全に分けて評価
  2. 市場¥2,000-5,000万のうち、希少性プレミアムが90%以上
  3. 5711/1A-010(ブルー)が定番中の定番
  4. 正規購入は5-10年単位の長期戦
  5. 資産的所有として考える:30年で価値が約30-40倍

ノーチラスは、「時計コレクションの到達点の一つ」だ。¥2,000-5,000万円を払うなら、30年以上「身に付ける」前提で考えるべきだ。

経営者の所有哲学については経営者 時計の選び方 で別途綴った。

参考資料


次に読む

「大人の趣味」では、本物志向の道具と長く付き合う知恵を、専門家5名が綴っています。編集方針はこちら

よくある質問

Q. パテックフィリップ ノーチラスの定価と市場価格を教えてください。
現行ノーチラス5811/1G(ホワイトゴールド・2022年発表)の定価は¥9,900,000、5712/1A-001(スチール・現行)は¥4,300,000程度。市場価格はスチールモデルで¥18,000,000-25,000,000、ホワイトゴールドで¥25,000,000-40,000,000。生産終了した5711/1A(スチール・ブルー文字盤)は伝説的銘柄で、市場では¥30,000,000-50,000,000で取引されています。
Q. ノーチラスとロレックス デイトナ、どちらが格上ですか?
時計評論30年の経験では、純粋な「ブランド価値」と「製造数の少なさ」ではパテックフィリップ ノーチラスが上です。年間生産数はパテック全体で約62,000本、ノーチラスはその中でも数千本程度。ロレックス デイトナの年間生産は推定数万本。ただし、市場流動性ではロレックスの方が高く、売却のしやすさではロレックスに軍配が上がります。
Q. ノーチラスはなぜこれほど高騰しているのですか?
3つの理由があります。①ジェラルド・ジェンタの伝説的デザイン(1976年発表、50年経っても古びない)②パテックフィリップの極限的な生産制限(年数千本のみ)③スチールスポーツウォッチへの世界的需要爆発(2010年代以降)。特に2021年、5711/1Aの生産終了発表により市場価格が一気に2倍に跳ね上がりました。
Q. ノーチラスを正規購入する方法はありますか?
極めて困難です。①パテックフィリップ正規ブティック(東京・銀座)での購入には、過去の正規購入実績の積み重ねが前提(最低5-10年の関係構築)②パテックフィリップ・ジュネーブ本店での購入は世界中の顧客との競合③並行店経由が現実的だが、市場価格は定価の5-10倍。「正規価格でノーチラスを買う」のは、世界の時計コレクターでも年間数百人しか叶わない。

About the author

川村 篤志

時計評論家 / コレクター歴30年・機械式時計 所有歴30年・40ブランド以上

機械式時計コレクター。所有歴のあるブランドは40以上、現役で稼働している手持ちは20本前後。雑誌寄稿100本超。「投機ではなく所有」を語る数少ない評論家。

Editor's note

編集後記とエッセイは、note で。

サイト本編に書ききれなかった編集現場の話、取材で出会った職人たちのエピソード、執筆陣の30年・20年の所有歴。 サイトとは別の温度の話を、note でゆっくり綴っています。

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