ロレックス 価値が下がらないモデル──リセール率順の7本と選び方
デイトナは定価¥2,499,200に対し中古実勢500〜680万円──ロレックスには価値が下がらないどころか、定価を大きく超えて取引されるモデルが存在する。コレクター歴30年の評論家が、2026年の定価と中古相場を検証し、リセール率順のランキングと値下がりしやすいモデル、買う時の注意までまとめた。
川村 篤志 時計評論家 / コレクター歴30年
公開: 2026年8月11日 更新: 2026年8月11日
「どのロレックスを買えば、損をしませんか」
この10年でいちばん増えた質問が、これだ。ロレックスの価値が下がらないモデルはどれか──気持ちは分かる。100万円を超える買い物で、5年後に半値になる一本と、買値を上回る一本があるなら、誰でも後者を知りたい。
結論から言えば、価値が下がらないロレックスは実在する。それどころか、定価の2倍以上で取引され続けているモデルすらある。ただし全モデルではない。定価を割り込むロレックスも、確かに存在する。
この記事では、コレクター歴30年の私が、2026年の定価と中古実勢を突き合わせて「リセール率」を検証し、価値が下がりにくいモデルをランキング形式で整理する。あわせて、値下がりしやすいモデルと、値持ちを守る買い方の作法まで書く。定価は2026年1月改定後の国内定価(税込)で、最新価格はロレックス公式サイトで必ず確認してほしい。相場の数字は執筆時点で大手専門店・買取店の公表価格を複数突き合わせたものだ。

「価値が下がらない」の正体──リセール率という物差し
まず物差しを揃えたい。本稿でいうリセール率とは、「中古実勢価格 ÷ 現行定価」だ。1.0倍なら定価と同じ値段で流通しており、2.0倍なら定価の2倍。この数字が1.0を大きく超えるモデルが、俗に「価値が下がらないロレックス」と呼ばれる。
注意点がひとつ。中古実勢は店頭の販売価格であって、あなたが売る時に手にする買取価格はそこから1〜2割下がるのが普通だ。リセール率1.3倍のモデルなら、売却時に手元に残るのはおおむね定価前後。この差を知らずに「買った値段より高く売れるはず」と店に行くと、がっかりすることになる。
では、なぜ定価を超える中古が成立するのか。構造は3つある。
第一に、需要が生産数を恒常的に上回っている。 ロレックスの年間生産は100万本強と言われるが、世界の需要はそれを大きく超える。特にステンレスのスポーツモデルは、正規店に入荷しても店頭に並ぶ前に購入履歴のある顧客へ案内されることが多く、一見の客が定価で買うのは至難だ。何度も店に通う「マラソン」という言葉が生まれた理由である(この攻略はロレックスマラソンの記事に書いた)。定価で買えない人の需要が並行店・中古店に流れ、プレミアが価格として可視化される。
第二に、定価改定が相場の床を切り上げる。 ロレックスはここ数年、ほぼ毎年1月に定価を改定している。2026年1月もステンレスモデルで6〜7%前後の値上げがあった。並行店や買取店は「新しい定価」を基準線に価格を組み直すから、定価が上がるたびに中古相場の底も持ち上がる。2026年の定価一覧と見比べると、この連動は面白いほどはっきり見える。
第三に、球数の絞られたモデルに需要が集中する。 デイトナがその極致だ。誰もが知っていて、誰も正規店で見たことがない。この希少性の演出──意図的かどうかは別として──が、リセール率2倍超という時計市場でも特異な数字を支えている。
逆に言えば、この3条件から外れるモデル、つまり供給が需要に追いついているモデルは、ロレックスであっても普通に値下がりする。そこは後半で正直に書く。
価値が下がりにくいロレックス ランキング──リセール率順
2026年定価と執筆時点の中古実勢から、主要モデルをリセール率順に並べた。
| 順位 | モデル | Ref. | 定価(税込) | 中古実勢の目安 | リセール率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | コスモグラフ デイトナ | 126500LN | ¥2,499,200 | 約500〜680万円 | 約2.0〜2.7倍 |
| 2 | GMTマスターII | 126710BLNR | ¥1,747,900〜 | 約300〜355万円 | 約1.7〜2.0倍 |
| 3 | サブマリーナ デイト | 126610LN | ¥1,683,000 | 約210〜250万円 | 約1.3〜1.5倍 |
| 4 | サブマリーナ(ノンデイト) | 124060 | ¥1,494,900 | 約200万円前後 | 約1.3倍 |
| 5 | エクスプローラー 36mm | 124270 | ¥1,177,000 | 約140〜165万円 | 約1.2〜1.4倍 |
| 6 | オイスターパーペチュアル41 | 134300 | ¥1,045,000 | 約115〜145万円 | 約1.1〜1.3倍 |
| 7 | デイトジャスト36 | 126200 | ¥1,241,900 | 約115〜170万円台 | 約0.9〜1.4倍 |
順に性格を見ていく。
1位: デイトナ──別格。ただし「買えれば」の話
リセール率2.0〜2.7倍。この数字の意味を冷静に言えば、「正規店で定価購入できた瞬間に、数百万円の含み益が生まれる」ということだ。だからこそ転売需要が集中し、正規店の店頭からは消える。執筆時点の大手販売店では630〜640万円台の個体が中心で、買取ですら570〜600万円前後の提示が出ている。
私が本格的に集め始めた1990年代後半、ステンレスのデイトナは「人気はあるが買える時計」だった。今は「相場を語る時計」になってしまった。値持ちという観点では文句なしの1位だが、定価で買える確率を考えると、これを「買うべきモデル」として人に勧めたことは、実はほとんどない。
2位: GMTマスターII──スポーツ系の優等生
青黒ベゼル、通称バットマン(126710BLNR)はリセール率約1.7〜2.0倍。デイトナほどの狂騒はないが、相場の動きが読みやすく、高値圏で安定している。2つの時間帯を同時に読める実用性と、華のあるツートーンベゼルの組み合わせは、中古市場でも指名買いが絶えない。GMTマスターIIの詳細は別稿に譲るが、「実用として使い、結果として値も持つ」バランスなら、私はデイトナよりこちらを評価している。
3位・4位: サブマリーナ──王道の安定感
ダイバーズの代名詞。デイト付き126610LNが約1.3〜1.5倍、ノンデイトの124060が約1.3倍。2倍超の狂った数字ではないぶん、相場の上下動も穏やかで、10年単位で見ると最も「計算が立つ」スポーツロレックスだと思う。買取相場も2026年に入って240万円前後まで戻しており、底堅い。
個人的な話をすれば、私の最初のロレックスは1998年に買ったサブマリーナ(14060)だった。確か35万円前後だったと思う。同格の現行ノンデイトの定価は¥1,494,900、中古実勢は200万円前後。30年近く経って、あの時計は「買値の5倍の値札が付く道具」になった。もっとも、売る気は一度も起きたことがないのだが。
5位: エクスプローラー36──静かな実力者
派手さのない3針だが、リセール率は約1.2〜1.4倍と立派にプレミア圏にいる。買取価格ですら150万円前後と定価(¥1,177,000)を上回る提示が珍しくない。シンプルで飽きず、換金性も高い──資産防衛的な発想でこの時計を選ぶ人が増えているという話も、買取の現場ではよく聞く。エクスプローラーは私が「最初の一本」として最も勧めることの多いモデルでもある。
6位: オイスターパーペチュアル41──廃番が生んだプレミア
装飾を削ぎ落とした入門ライン。現行134300の定価は¥1,045,000で、黒・緑といった定番文字盤の中古実勢は115〜145万円前後、リセール率約1.1〜1.3倍。2025年に先代124300が廃番になったことで、旧型に指名需要が生まれた。
ここで注意をひとつ。オイスターパーペチュアルにはターコイズブルーなど一部文字盤に300万円超という異常なプレミアが付いているが、あれは文字盤の希少性に対する投機であって、モデル本来の値持ちとは別の現象だ。プレミア文字盤を「資産」として追いかけるのは、私は勧めない。
7位: デイトジャスト36──値持ちより「買える」ことの価値
リセール率約0.9〜1.4倍と幅が広いのは、文字盤・ベゼル仕様で人気が割れるからだ。定価を下回る個体も現にある。ただ、私はこれを欠点だと思っていない。プレミアが乗らないということは、定価前後で普通に買えるということでもある。「価値が下がらないモデル」を探す人の何割かは、実際にはデイトジャストを買うのが最も幸福だと、30年の経験から思う。
逆に、値下がりしやすいロレックス
ここからは、あまり書かれないことを正直に書く。ロレックスなら何でも値持ちする、というのは誤解だ。
チェリーニ(生産終了)。 ロレックス唯一の本格ドレスラインだったが、リセールの世界では長年苦戦してきた。金無垢で定価200万円級だった個体が、中古では120〜130万円前後。リセール率に直せば0.5〜0.7倍といったところで、スポーツ系とは完全に別世界だ。生産終了で「人と被らない」魅力は増したが、値持ちを求める買い物ではない。
金無垢・宝飾系のドレスモデル。 デイデイトのような金無垢は、定価(18ctゴールドの40mmで¥7,481,100〜)に対して中古が割れやすい領域だった。ここ数年は金相場の高騰で買取の底が大きく持ち上がり、過去のような大幅な定価割れは減ったが、それでも「定価を超えて売れる」のはごく一部。ダイヤ入りの宝飾系は個体差と流行の影響が大きく、査定のブレも激しい。
共通する構造はシンプルだ。スポーツモデルと違って供給が需要に追いついている、あるいは需要そのものが細い。リセール率の高低は品質の高低ではなく、あくまで需給の写し絵である──ここを混同すると、買い物を誤る。チェリーニは時計としては素晴らしい。値札の話と、時計の話は、分けて考えるべきだ。
先ほどスポーツモデルを「値持ちの優等生」と書いたが、ひとつ訂正しておきたい。スポーツ系でも相場は下がる時は下がる。2022年の世界的な時計バブル崩壊では、デイトナの並行価格が数ヶ月で2割以上落ちた。私の周りでも、ピークで買って青くなった人を何人か知っている。「下がりにくい」は「下がらない」ではない。この一線だけは、どうか忘れないでほしい。
値持ちを守る買い方──保証書・ブレス駒・箱は「資産の一部」
どのモデルを買うかと同じくらい、どういう状態で買い、どう保管するかがリセールを左右する。査定の現場で差が付くポイントを挙げる。
保証書(ギャランティカード)は時計の戸籍だ。 真贋と購入履歴を裏付ける最重要書類で、これが無い個体は業者も売値を下げざるを得ず、買取は数十万円単位で下がることがある。中古で買うなら保証書付きの個体を選ぶこと。多少高くても、売る時にその差は回収できる。偽造ギャランティも存在することは頭の片隅に置いておいてほしい。
ブレスレットの余りコマを捨てない。 腕に合わせて詰めた余りコマは、袋に入れて保証書と一緒に保管する。コマは1つ数万円で単品購入すると高くつくため、欠品は査定で確実に引かれる。私は購入日をメモした小袋に入れて、時計ごとに分けて保管している。地味な習慣だが、30年やってきて一度も後悔したことがない。
箱・冊子も「完品」の条件。 箱だけで数万円の査定差が付くことは普通にある。かさばるのは分かるが、捨てた瞬間にその個体は「箱なし」という下のランクに落ちる。
研磨は最小限に。 傷を消したくなる気持ちは分かるが、ポリッシュのたびにケースの角は痩せる。ヴィンテージの世界では「未研磨」が最上の褒め言葉だ。日常の小傷は勲章と思って、オーバーホール時も「研磨なし」を指定する選択肢があることを覚えておいてほしい。
買う場所の選び方も値持ちの一部だ。正規店で買えれば理想だが、現実には並行・中古が主戦場になる。店選びと個体の見極めは中古ロレックスの買い方に詳しくまとめた。
終わりに──値持ちで選んでも、使わなければ意味がない
最後に、この記事を根底からひっくり返すようなことを書く。
リセール率でロレックスを選ぶのは、間違いではない。100万円超の買い物で値持ちを気にするのは、むしろ健全だ。私自身、買う前には必ず相場を調べるし、この記事もそのために書いた。
だが、30年この趣味を続けてきて確信していることがある。値持ちだけで選んだ時計は、結局使われない。 相場が気になって傷を付けられず、ワインダーの中で眠り続け、数年後に「上がったから」と手放される。それは時計の所有ではなく、時計の形をした含み益の管理だ。そして皮肉なことに、値持ちの良い時計ほど、本当に満足して使っている人は売らない。市場に出てくるのは、愛されなかった個体である。
私のサブマリーナは買値の5倍の値札が付くようになったが、その価値の大半は、私にとっては相場ではない。雨の日も着けた、子どもの運動会にも着けた、その30年分の時間だ。値持ちの良いモデルを選び、傷を恐れず使い倒し、それでも手放す時が来たら高く売れる──これがいちばん豊かな順序だと思う。
どのモデルが自分に合うか迷ったら、まずロレックス完全ガイドで全体の地図を眺めてほしい。値持ちの数字は、その地図を読むための一つの目盛りに過ぎない。
参考資料
- ロレックス公式サイト — 各モデルの正式スペックと最新の国内定価
- GINZA RASIN 時計買取ブログ サブマリーナ買取相場 — 126610LNの2026年買取相場の確認に使用
- 腕時計投資.com デイトナ126500LN相場情報 — デイトナの中古実勢・相場推移の確認に使用
- 一般社団法人 日本時計協会 — 日本の時計業界統計と基礎知識
次に読む
- ロレックス完全ガイド:全モデルの序列と選び方の全体地図
- ロレックス定価一覧 2026年版:リセール率の分母になる最新定価を全モデル分
- 中古ロレックスの買い方:プレミア相場の中で個体をどう見極めるか
- ロレックス デイトナ:リセール率1位の実像を30年コレクターが解剖
「大人の趣味」では、本物志向の道具と長く付き合う知恵を、専門家5名が綴っています。編集方針はこちら。
よくある質問
- Q. 最も価値が下がらないロレックスはどのモデルですか?
- 現行モデルではコスモグラフ デイトナ(Ref.126500LN)です。2026年の定価¥2,499,200に対し、中古実勢は約500〜680万円と定価の2倍を超えています。次点はGMTマスターII(126710BLNR)で定価約178万円に対し実勢300万円超、サブマリーナ デイト(126610LN)も定価¥1,683,000に対し実勢210〜250万円と、ステンレスのスポーツモデルが上位を独占します。
- Q. なぜロレックスは定価より高く売れるのですか?
- 世界的な需要が生産数を大きく上回り、正規店の店頭にスポーツモデルがほぼ並ばないためです。「定価で買いたくても買えない」人たちが並行店・中古店に流れ、そこにプレミア価格が成立します。加えてロレックスはほぼ毎年1月に定価を改定しており、新しい定価が中古相場の基準線を毎年切り上げていく構造も効いています。
- Q. 逆に値下がりしやすいロレックスはありますか?
- あります。代表格は生産終了したドレスラインのチェリーニで、中古は120〜130万円前後と当時の定価を大きく割り込んでいます。金無垢のドレス系やダイヤ入りの宝飾系も、定価対比では割れやすい領域です(近年は金相場の高騰で買取の底は上がっていますが、定価を超えることは稀です)。「ロレックスなら何でも値持ちする」は誤解です。
- Q. 保証書をなくすと売る時にどのくらい安くなりますか?
- モデルと店にもよりますが、現行スポーツモデルでは数十万円単位の減額を覚悟すべきです。保証書(ギャランティカード)は真贋と購入履歴を裏付ける最重要書類で、無い個体は業者側の販売価格も下がるため、買取もその分下がります。箱・余りコマ・冊子類も査定に響きます。購入時に全付属品を確認し、売る予定がなくても一式保管しておくことを勧めます。
About the author
川村 篤志
時計評論家 / コレクター歴30年・機械式時計 所有歴30年・40ブランド以上
機械式時計コレクター。所有歴のあるブランドは40以上、現役で稼働している手持ちは20本前後。雑誌寄稿100本超。「投機ではなく所有」を語る数少ない評論家。
Editor's note
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サイト本編に書ききれなかった編集現場の話、取材で出会った職人たちのエピソード、執筆陣の30年・20年の所有歴。 サイトとは別の温度の話を、note でゆっくり綴っています。